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マサシの運動場 1

マサシはぐんとスピードを上げた。
西荻窪の歩道のない一方通行の道を、車とは逆方向に自転車で走るのは簡単ではない。
細い道をこちらに向かって走ってくる自動車。歩行者やママチャリに乗って悠然と道路を横切ろうとする年寄りもいる。
自動車はときには左右どちらかに寄り、あるいは止まり、歩行者の安全に気を配りながら疾走する。
それは歩行者も自転車も同じであり、その道幅の狭い商店街では、すべてのものが周囲に気をつけながら移動していた。
その間をマサシはかなりのスピードですり抜けた。吉祥寺方面へ向け、全身にしっとり汗をにじませながらリズミカルにペダルに力を落としていく。
目指すは、西荻窪駅と吉祥寺駅のほぼ中間に位置するJR線高架の下に設けられた運動場だ。
運営しているのは武蔵野市である。
運営と言っても、有料の運動場ではない。無料で、予約の必要もない。誰も使用していなければ、武蔵野市民でなくても使えるという、ひと昔前の空き地のようなスペースである。
広さにしてテニスコート2面分くらいだろうか。野球場のダイヤモンドよりもやや小さい。
マサシはその運動場が、「運動場」と呼ばれるずっと以前からピッチング練習に使っていた。
まだ金網で囲われるまえ、高架下をまっすぐ線路に沿って吉祥寺へ抜けられる道であった時代に、マサシは、通行人に注意を払いながら高架を支えるコンクリート支柱に軟式ボールをぶつけていた。
いつからか、そのスペースは金網で囲われ「武蔵野市運動場」と名前づけられ、近所の子供やスポーツに興じる大人たちが無料で使うスペースとなったのだ。

月曜日だった。
いつも運動場を使っているサッカー少年たちは学校へ行っている時間帯である。今なら、かなりの確率で運動場は空いているはずだった。それでもマサシはペダルの回転をゆるめられなかった。1秒でも早く到着したかった。もし誰かが自分より早く、それが一瞬であったとしても、自分より早く到着していたら、マサシに運動場を使用する権利はないのである。


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